「インビザライン」などに代表されるマウスピース型の歯科矯正。近年、海外ではこのマウスピースを購入し、クリニックに通わず自宅で歯科矯正を行えるサービスが登場しました。「セルフ矯正」とも言うべきこのサービスは最近日本でも開始されましたが、実は歯科医師の目から見ると大きな問題点をはらんでいます。そこで今回は、セルフ歯科矯正と考えられるリスクについて詳しくご説明します。

「安さ」と、自宅でできるという「お手軽さ」が魅力のセルフ歯科矯正

ノートパソコン

セルフ歯科矯正とは、定期的に自宅に届くマウスピースを毎日使用することで、自分で歯並びを整えていくというもの。初回のみ専門のショップに出向いて歯の型をとりますが、治療経過の確認などそれ以降のやりとりはすべてオンラインで、画面を通して行います。

セルフ歯科矯正では、定期的な通院が不要というお手軽さに加えて、クリニックよりも安い費用で歯科矯正が受けられることが強調されています。たしかに、これらは患者さんにとって大きな魅力です。では、セルフ歯科矯正のリスクとはなんでしょうか。

セルフ歯科矯正の問題点とは

マウスピース

マウスピース型での歯科矯正が適用できるのは「一部の人」のみ

マウスピース型の矯正は、歯並びの不正が重度な人や抜歯が必要な人には不向きです。

日本人の場合、あごのスペースが足りず歯が並びきらないために歯並びが悪くなっているケースが多く、抜歯して歯がおさまるスペースを作る必要があります。その場合、セルフのマウスピース矯正を受けても望むような口もとは手に入らない可能性が高いのです。

セルフ歯科矯正の登場によって、本来マウスピースでは治療できない歯並びの人がマウスピース型矯正を選択してしまい、問題が起こる事態が増えるのが懸念されます。

歯科矯正中のリスク管理が難しくなる

「マウスピースを自分ではめるだけ」と聞くと簡単なことのように思えますが、歯を動かすことにはリスクをともないます。例えば、歯に力をかけすぎることで歯根が吸収されてしまい、歯が抜け落ちてしまうなどの危険もあるのです。

定期的に通院していれば、そのような異変にもいち早く気づき適切に対処できますが、セルフ歯科矯正の場合、医師の診察を受けられないので困難がともないます。医師のモニタリングなしに歯科矯正を行うと、予期せぬ大きな問題を引き起こす可能性があるのです。

安全な歯科矯正には、経験ある歯科医師の診断と、定期的な診察を強くおすすめします

以上の懸念点をふまえ、日本矯正歯科学会では、マウスピース型矯正は、矯正歯科領域全般に知識と経験のある歯科医師の診察と検査、診断をもとに行うことを推奨しています。

日本矯正歯科学会からのお知らせ「マウスピース型矯正装置による治療に関する見解」

クリニックで歯科矯正を受けるには、初回のカウンセリングや検査、定期的な調整など複数回の通院が必要なので、負担を感じる場面もあるでしょう。しかし、その結果得られるのは、専門の歯科医師によるオーダーメイドの治療プランと、丁寧な治療経過の観察、そしてフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションにもとづく安心感です。

セルフ歯科矯正をご検討中の方はデメリットやリスクまで理解し、安さ・手軽さだけで安易にセルフ歯科矯正を選択することのないようご注意ください。